星が見えるということ
冬空は空気が澄んで、星がきれいに見える。
仕事からの帰り道、ふと空を見上げるとオリオン座が目に入った。
真っ黒な空に小さく輝く点と点。ずっと見ていると、
それは時に小さな弓を胸の前で構えるおじさんになり、それは時に逆立ちをしている人のようにもなる。想像力が夜空に様々な絵を描く。
こう考えると、昔の人は豊かだと思う。オリオン座を自分だけのものにするのに、絵具や写真はいらない。想像力で自分の中のとっておきのオリオン座を作ればいい。その素材が、空を見上げるだけで無数に手に入ったのだ。
羨ましい。東京に住む私は、素直にそう思う。
なぜ想像が掻き立てられるかというと、そのシンプルさにある。
シンプルであればあるほど情報が少ないため、自分の中で肉付けがしやすい。
いってみれば白米のようなものだ。おにぎりにするもよし、チャーハンにするもよし、
何にだってなれる。
今は、なんだか複雑だ。多様化に伴い、家は形式も様々、世帯数も様々、いろんな形をしたものがある。また、労働者が働く場所も多種多様だ。地上では人口が増え、土地を有効活用しようと、建物は空へ空へと高くなっていった。その上広告や電飾が所せましと飾られる。
目に飛び込んでくる情報量の多さに人はびっくりしてしまう。
そこはシンプルさとはほど遠く、想像からも遠ざかった場所にいる。
自分だけのとっておきを作れる場所が都会には少ないのだ。
だから、たぶん自然豊かなところに行きたくなるのかもしれない。
そんなことを考えながら、ゆっくりと歩いて家に帰った。